幸せな生活

「お兄ちゃん、朝だよ!起きて!…起きてったらぁ!」

月曜日の朝。今日も甲高い声が夢の中へ乱入してきて、俺は現実へと強制的に引き戻される。

「うーん、もう少し・・・昨日は遅くまでウマ娘をして寝不足なんだよ・・・」

「もう!ダメだよ!早く起きないと会社に遅れるよ!」

ああ、そうだ。日曜日はもう終わったんだった。

「お兄ちゃん、朝だよ!起きt」
カシャッ

アラームのセリフが2周目に突入したところで、ボタンを押してベッドから起き上がる。嫌いな月曜日とはいえ、自分の好きな声で目覚めるのは気持ちがいい。

まだぼんやりと定まらない視界で、洗面所へと向かい歯を磨く。ミントの刺激が鼻を抜け、目を抜け、脳へと到達することでようやく俺は覚醒する。今日も一日が始まる。

「おはようございます。コーヒー、いれておきましたよ。」

歯を磨き終わりリビングへと向かうと、起きるタイミングを見計らって、コーヒーメーカーが自動で熱々のおいしいコーヒーをいれてくれる。

「おはよう。今日もうまいよ。」

「ありがとうございます。」

俺はコーヒーをすすり、頭が少しずつクリアになっていくのを感じながら、食パンを1枚とりトースターへ渡す。

「これ、よろしくね。」

「かしこまりました。」

「いつも悪いな。」

「いえ、仕事ですから。」

コーヒーメーカーもトースターも、真面目だ。もう少しユーモアのある返事をしてくれてもいいのに。だが、その真面目なところも魅力の一つだ。

「アレクサ、テレビつけて。」

「はい。」

トースターが食パンを焦がしている間に、アレクサにテレビをつけてもらう。アレクサの返事はいつもそっけない。うまく付き合っていけば心を開いて楽しく会話してくれると聞いたことがあるが、俺には機械心はよくわからない。

「今日もコロナのニュースばっかりだな。いつになったら風化されるのやら。」

「ピコン・・・すみません、わかりません。」

いつの間にかSiriが反応してしまったようだ。お前にもわからないなら、きっと人類には知る由もないんだろうな。

「チーン!・・・トーストが焼けました。」

「お、ありがとう。」

2分もしないうちにトーストが焼きあがった。さすが、仕事が早い。渡されたトーストを皿に置き、冷蔵庫を開ける。

「・・・おっかしいなー、バターどこへ入れたっけ」

「バターは、ドアポケットにあります。」

「あ、そうだった!場所変えたんだよなー。覚えててくれて助かったよ。」

今や冷蔵庫まで言葉を発する時代だ。最初は冷蔵庫に会話機能なんか必要なのかと疑問に思ったものだが、冷蔵庫に入れるものをカメラで監視し、どこにあるかをすぐ答えてくれるのは、がさつな俺にとってはとてもありがたかった。

「アレクサ、テレビ消して。」

「はい。」

機械たちと一緒に作った朝食を平らげ、食器を食洗器へ預ける。

「洗浄を開始します。」

「よろしく。」

俺はスーツに着替え、仕事へ向かう。

仕事が終わって帰ってきたら、アレクサが電気をつけてくれるし、給湯器がお風呂を入れてくれる。家の中はいつも誰かの声で満ちている。

俺は、幸せだ。

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