もしもドラえもんがポケモンセンターに来たら

「ドっ・・・!?」

あやうく私は声をあげそうになったが、システム上、いつもと違うセリフを発するわけにはいかない。センターの入り口から青くて大きい球体が入ってきたとき、一瞬、色違いのマルマインでも紛れ込んできたのかと冷や汗をかいたが、その球体には同じような大きさの身体がついており、短いが手も足もあった。

ドラえもんだ。
あのドラえもんがポケモンセンターにやってきた。

ドラえもんがこの世界にいるはずがないので、異世界転生する道具でも使ってロールプレイングをしているんだろう。

他の従業員もきっと驚いているに違いないが、彼女たちも基本的には、話しかけられるまで自らイベントを発生させることはない。話しかけられたいだろうが、ポケモンを預かって回復させる係の私以外は、スルーされることが多い。

案の定、ドラえもんはわき目も振らずに私のほうへやってきた。入り口からまっすぐ進めば受付にすぐたどり着ける。

「ようこそ!ポケモンセンターへ」
「ここでは ポケモンの たいりょく かいふくを いたします」

私はいつも通りの言葉を発した。少しテンションは上がっているが、いつもと変わらぬ笑顔で対応できたと思う。

「お願いします。」

ドラえもんは目を合わせることもなく、慣れた手つきで6つのモンスターボールを置いた。この町までやってきたのだ。もう何十回とポケモンセンターを利用したのだろう。

「それでは あずらかせて いただきます!」

さて、いったいどんなポケモンを使っているんだろう。どうせ、でんきタイプでそろえてたりするんだろうな。

・・・

まずはリザードン。最初にヒトカゲを選択したのだろうか。タケシさんを倒すのに苦労したんだろうな。あのへんはほとんどいわタイプに弱いポケモンしかいないのに、最初のジムリーダーがタケシさんなのは、いささか初心者に厳しいものだと常々思う。

続いてレアコイル。これは予想していた。もし私がドラえもんでも、レアコイルを選ぶだろう。レアコイルの磁力で体に異常をきたさないのかと心配になったものの、使ってるってことは大丈夫なんだろうな。

3体目はマルマイン。唯一「ひんし」になっているところを見るに、じばくでもさせたんだろう。

4体目・・・これは…ケンタロスだ!やはり捕まえるために何時間も探したんだろうか・・・。いや、ドラえもんともなれば、運を操作することぐらいたやすいはずだ。ケンタロスくらい持っていても不思議ではない。

5体目はナッシー。ナッシーは正直かなり強いと思う。いいチョイスだ。

6体目は…カモネギか。なんだかこのポケモンたちの中では浮いているような・・・あ、そうか。「いあいぎり」と「そらをとぶ」を覚えさせてる移動要員だ。

・・・

でんきタイプで揃えているという予想はあっさり覆され、なんならガチめの強ポケモンで固められている。もしかすると何周かプレイしているのかもしれない。そうだとすると、前回の私も、同じようにびっくりしたんだろうか。

「おまちどうさまでした!おあずかりした ポケモンは みんな げんきに なりましたよ!」
「またの ごりようを おまちしています!」

私はいつも通りハキハキと接客し、ドラえもんにポケモンを返した。

「ありがとうございます。」
ドラえもんはこっちを見て少し笑った。

入ってきたときと同様、そのまま目を合わせず一直線に去っていくと思っていたが、最後は愛想よく締めてくれたおかげで、なんだか私の心も晴れやかになった。さすが、これが国民的アイドルというものだ。

ドラえもんはポケモンをポケットにしまうと、少し駆け足でポケモンセンターを後にした。この町に来たばかりなら、しばらくこの町でイベントを進めるだろう。マルマインがじばくするたびにここを訪れることになる。

次はもっと話したいな。

でも私は、システム上、いつもと違う言葉を発せない。

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